Talk05

三島想平×久野洋平×
辻友貴×飯田瑞規

(取材・文 / 西廣智一)

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最初の1曲「青写真」でアルバムの指針ができた

──1年ぶりのニューアルバム「blueprint」は間口が広いポップな作風なのと同時に、聴き込めば聴き込むほどいろんなものが見えてくるディープなアルバムという印象で。三島くんはブログに「ターニングポイントになる作品」と書いていましたが、本当にそんな1枚だと思いました。

三島 読んでくださったんですね。ああ、恥ずかしい(笑)。でもそう言ってもらえて光栄です。

──なぜこういう作品が完成したのかというところを聞けたらと思います。まず、前作「Drums,Bass,2(to) Guitars」の時点でかなり“開かれた”アルバムを作ったなという印象がありましたが、そこから次に進むにおいてどういうことを想定していましたか?

三島 「DB2G」はバンドのリアルさをとことん追求して作ったんですけど、そこからもう一歩、もっとドラマチックなサウンドでもっとメッセージ性の強い作品にしたいとは漠然に考えていて。で、前作のツアーが終わって夏ぐらいにようやく曲を作り出したんですけど、そこで最初にできた曲が「青写真」だったんです。この曲は自分の中でも新しい方法論で作ったんですけど、ここでちょっと新しいモードが見えてきて、ちょっとずつ外堀ができた気がしますね。

飯田 その「青写真」での新しい方法論なんですけど、三島がピアノを使って曲の全体像をDTMで作ってきたものを、バンドで当てて再構築していく方法だったんです。メロディも打ち込みで作ってきたものをバンドサウンドで鳴らしたらどうなるのか、とても面白いやり方で刺激的だったし、実際に完成した「青写真」もすごく満足のいく仕上がりで。最初の1曲でアルバムの指針ができてよかったなって感じでしたね。

久野 でも僕は正直、戸惑いましたよ。前のアルバムはバンドの勢いで作り上げていく感じだったのが、急に真逆の、個人で作ってきたものをバンドで鳴らす方法になったから。いい曲かどうかは別として、正直どうしたらいいかわかんないし不安だったんです。でも全曲揃ったあとに「青写真」を聴き返したときにちゃんと意味がわかったというか、すごくいい方向に進もうとしていたんだなって初めて理解できました。

三島 ぶっちゃけ、久野くんからは「そのやり方はやめよう」って言われましたからね(笑)。

久野 なんでやめようって言ったかというと、僕は前のアルバムでバンドとしての一体感を手に入れた感じがしたので、その良さを一回なしにして別のことをするのは勿体ないと思ったからで、極端な話として「やめよう」と言いました(笑)。

──そのバンドの勢いをずっと押していきたかったと。辻くんは?

辻 「青写真」では最初からギターフレーズもピアノで作られていて、以前は手癖で弾いてたところも多かったんで、そこは新しくて新鮮でしたね。今までの音の並びとちょっと違う感じで、僕は結構好きでした。

三島 単純に僕がDTMをうまく使いこなせるようになって、みんなに渡す段階での曲の雰囲気が多少変わったところが大きいのかな。ピアノをフィーチャーした曲がいくつかあるところもその影響だし。で、「青写真」を作ったあとに「今後どういうふうに進めようか?」とみんなで話し合って。僕は全部「青写真」みたいなやり方で進めたいと思ってたんですけど、それは違うと。じゃあバンドとしてどう進めようかってなったときに、曲の起点を作るのは基本的に僕ですけど、聴き手の琴線に触れるドラマチックでメロディアスなものにしたいという意思統一が改めてできたんです。「drama」みたいにメッセージ性が強くてメロディは泣きながら走るとか、そういうところを共有して。そこは「DB2G」よりも狙って作った感じですね。

久野 以前は三島が曲の断片を持ってきて、それをどうするかっていう話し合いが多かったんですけど、今回は「こういう曲が欲しいよね」という段階からみんなで話し合うことが多かったですね。

三島 それがバンドとして一番の変化かな。今回は久野くんがプロデューサーだったんで、俺は宮崎駿の役割に徹しました……あれっ、伝わらない?(笑)

──皆さん無反応ですが(笑)。

三島 スタジオジブリのプロデューサーが鈴木敏夫さんですよね。

久野 ごめん、その例えがよくわからなかった(笑)。

三島 あははは(笑)。例えばプロデューサーの鈴木さんがこういう映画を作ろうと言ったら、宮崎さんが制作するっていう。

──プロデューサーから発注を受けて、三島くんが曲の準備をすると。それってcinema staffがこのメンバーで10年近く続いているからこその、絶対的な信頼関係があるからこそできることなんでしょうか。

三島 それも大きいでしょうね。昔だったら僕はもっと頑なでしたから。「俺がやりたいからこう! こうしたいからこう!」みたいなのはもうないし、バンドとしてやりたいことを尊重したい。さすがにそこは譲れないってところは言いますけど、それでもいかに多くのことをみんなと共有できるかがすごく重要だと今は思うし。

■「何かが一周したのかもしれない」

──それにしても最初にできた曲が「青写真」というのも興味深いです。結果的にアルバムを締めくくるにふさわしい、このアルバムを象徴する1曲になりましたし。

三島 僕的にはこのアルバムの裏主題歌ですからね、「青写真」は。

──青写真という言葉自体もすごく印象的ですよね。

三島 結構そういうことが多いんですよ。キーワードが1つ決まって物事がどんどん進んでいくみたいな。前々作「望郷」のときもそうでしたしね。

──これは偶然なのかわかりませんが、昨年6月のZepp DiverCity公演でのMCで三島くん、青写真という言葉を使ってるんですよ。

三島 ああ、使ってましたね。でもそれはこのアルバムとは直接つながりがあるわけではなくて、単純に青写真って言葉が昔から好きなんですよ。Fugaziの「Bluprint」って曲も、the guitar plus meの「blueprint」って曲もすごく好きだし、言葉としては最高にカッコイイ英単語の1つだと思っていて。だから心に残ってた言葉として、あのときも使ったんじゃないかな。

──なるほど。にしても10年近く活動してるバンドがこのタイミングで「青写真」「blueprint」という言葉を使うのも、すごく新鮮というか。

三島 そうか、タイトルだけで言ったら若さを象徴してるみたいですもんね(笑)。

──「Blue」って言葉には「若さ」「青臭さ」みたいな意味がありますし。

三島 「原点」とか。

──そういう印象が強いだけに、もはや中堅に位置するバンドが「青写真」という言葉を使ったり「青」を強調したりするのが、すごく面白くて。

久野 以前ミニアルバム「Blue,under the imagination」が出たあと、アー写やジャケ写、アルバムタイトルについて話し合うときに、絶対に「Blue」は使わないっていうことを三島が言ってたんです。それが今回「blueprint」ってタイトルになると決まったとき、僕は「何かが一周したのかもしれない」ってすごくビックリしました。

──「Blue」を使うのを禁じていた理由は?

三島 まあ一度使ったからって感じですよね。これまで出した作品はどれも重要ですけど、特に僕の中では「Blue,under the imagination」がすごく重要で。セルフプロデュースをし始めたのがここからで、うまく作れたっていう自信もあったからかな。

飯田 僕らは今年で28歳になるんですよ。みんなで共有したことはないんですけど、絶対にそれぞれ不安を感じながらここまでやってきてると思うんです。やっぱり大人になっていくにつれて、いろんなことを考えるじゃないですか。結構いろんな未来が見えてきてる中で青写真とか未来設計図を意味する言葉を使うことで、すごく前向きというか、まだまだやれるよねって気持ちになれると思うんです。ある意味では覚悟を決めたようにも受け取れる言葉だし。

三島 これは僕だけかもしれないけど、不安な気持ちは一周してなくなってしまったんですよね(笑)。音楽がなかったら何もないしなっていう考えがこの半年くらいで生まれてきて、それならやるしかないっていう気持ちが強くなった。今はあんまり深く考えずに、本当に楽しいんでやってます。不安なことばかり考えてると、それしか考えられなくなっちゃうし。

飯田 僕も一緒で、不安かどうかよりも今はとにかく音楽をやりたいんですよ。バンドをやりたいって前向きに思えてるし、ライブをやりたいって前よりも強く思えてる。個人的に考えてるいろんなことを一回排除して、とにかくバンドやらせて!って感じで、それくらい楽しくやれてるんです。

──30代を前に肝が座ったというのもあるんでしょうか。

三島 ありますね。すごいあります。

■今回は求められてることをやることに対して恐れてなくて

──そんなニューアルバム「blueprint」ですが、1曲1曲をピックアップして聴くと、どれも以前よりがっちり作り込まれてる感が強い気がしました。例えば、以前だったら衝動だけで突き進んでいたところをあえて抑制してるというか、メロディや歌詞を生かすためにそこのバランスを取っているような印象もあって。聴かせるということに重きを置いた作品なんじゃないかという気がしました。

三島 以前よりも歌をガツッと前面に出したいというか、よく聞こえるようにしたかったんで、アレンジの部分がちょっとずつ変わってきてるのはあると思います。それが曲によって抑制していると聞こえるのかもしれないですね。今回はバンドサウンドだけが突っ走ってるっていうのは、あんまりないかもしれない。

久野 ドラムに関して言うと、1曲の中に今持ってるテクニック全部を詰め込まなくなったというか。昔はできることも少なかったし、やれることを全部詰め込まないと不安だったんです。でも今はそういう自己主張がなくなってきて、曲をよくするためにはどうしたらいいかと考えられるようになった。そういう意味では大きく変わりましたね。

──そこが監督視点というかプロデューサー視点になってきた?

久野 そうなんですかね(笑)。自分が聴き手だったら「cinema staffがこういう曲を作ってくれるのを待ってました!」って思う曲を作りたいと、今回は作業しただけなんですけどね。

──なるほど。では飯田くんは?

飯田 この1年間、弾き語りを結構やってきたんで、歌に対して自信が付いてきたのは大きいかもしれないです。ボーカルに関しては、今まではどの曲を聴いても同じように聞こえてたかもしれないけど、今回は「こう聞かせたい、こうやって歌い上げたい」と1曲1曲と向き合って、いい歌が歌えたかなという気がしています。

──曲によっては声の表情に以前よりも多彩さが感じられるようになったと思いますよ。

飯田 そこはだいぶ意識しましたね。弾き語りを通じて小さい声から大きい声まで、自分のいいポイントや気持ちよく響くポイントを考えてやってきたんで。1年間の成果が出せたのかなと思います。

──辻くんはどうですか?

辻 ギターに関してはそんなに変わってないかもしれないですね(笑)。とはいえ、たぶん三島はこういうことをイメージしてるんだろうなと想像して弾いてはいます。

──変わってないかもしれないとはいえ、他のパートと合わさったときにそのバランス感で、聴く側は今までと違った印象を受けるのかもしれないですね。

辻 それはあると思います。

──このタイトルだから先入観もあるのかもしれないけど、すごく若々しくてみずみずしい作品にも感じられて。不思議な透明感があるんですよね。

三島 透明感……うん、あるかもしれないですね。そう意識して作ってるわけじゃないけど、サウンドメイクも影響してるんじゃないかと。バスーンと上に抜けてるドンシャリの音が。

久野 昔だったら「シネマならこうくるだろうな」って思われるようなことはやりたくないっていうのがあったんですけど、今回は求められてることをやることに対して恐れてなくて。それぞれの曲が最良の方向にまっすく突き抜けてるからみずみずしく聞こえるんじゃないかなって思いました。

三島 インディーズの頃は投げっぱなしで回収できませんっていうのが面白いと思ってたけど、特に今回は言葉や歌を聞かせたいというのがあったので、まず歌のためにオケがあるって考えて。歌がちゃんと聞こえるような整理の仕方をしてるのも大きく影響してるのかな。

──そういうところが、最初に言ったちょっと作り込んだ感につながったのかもしれないですね。

三島 そうですね。ちゃんと作ってる……「ちゃんと」というか「適当にしてない」ですね。

■芯の部分は変わってないけど、許容範囲は広がった

──今回は歌詞を先行で全部見せてしまうという試みもありました。

三島 イメージさせたかったんですよね、音像を。これはA&Rと一緒に決めたことなんですけど、「陸にある海」をSoundCloudで先行配信したのも、アルバムの内容を想像してほしかったから。内容をあまり出さずにどういうものなんだろうって考えてほしかったんです。今って先行配信でアルバムの内容がなんとなく聴けちゃうじゃないですか。僕らはそういう流れとは別のことをしたいというのもあったし、まず言葉を伝えたかった。

──アルバム1曲目のインストナンバー「陸にある海」を最初にフル配信するのも面白いですよね。まずインストからなんだって(笑)。

飯田 インストで打ち込みだし、人によっては裏切られたと思うんじゃないですかね(笑)。

三島 「何が起こってるんだろう?」っていう序章にはなったかなと。

──何かが変わるんじゃなくて、何かが始まるって感じは強かったですよね。で、その次にアルバム収録曲の全歌詞を公開して。

三島 これでインストアルバムじゃないよっていうのは、みんなわかってくれたと思うし(笑)。

──発売2カ月近く前に歌詞を全部見せてしまうことなんて、今までなかったですよね。

三島 ないですよね。実際、最初にスタッフから提案されたときは「何を言ってるんだろう?」と思ったんですけど(笑)、期待感を高めるには面白い施策だなって。

──歌詞だけ読むと、ちょっとした短編小説が11本並んでるような。

三島 それは意識してます。単純に好きなんです、そういうふうに見える歌詞が。句読点を入れたのも意識的なもので、句読点があると締まった感じになって、急に文章としての印象が強くなるし、行間も読んでもらえると思うし。

──そして歌詞が気になった人たちが、Twitterにハッシュタグを付けて感想をつぶやいていく「#シネマのブルプリ」企画もありました。さっきもいろいろ見てましたけど、面白いですね。いろんな解釈があって。

久野 「陸にある海」を最初に公開したときに、僕らみたいな歌で印象を持たれてるバンドがインストを出して賛否の否の意見が来るんじゃないかなと思ってたですけど、意外と少なくて。まあ「シネマにデジタルは求めてない」みたいな意見もありましたけどね。でもそういう人も歌詞を公開したら、「いつもの感じで安心した」と言ってたし。意外と信頼されてるんだなと思って、うれしかったですね。

──歌詞を先に出して、そのあとにメロディが付いた楽曲を配信すると、感想が二度届くわけで、しかも最初と二度目で違ったものになるかもしれないという楽しみもあるわけですよね。

三島 ありますね。僕もそこが楽しみでした。

久野 歌詞を出した次の日にライブで「シャドウ」を初めてやったんですけど、ライブ後に「歌詞を読んでからライブで聴いたら、1行目で泣けた」って意見がTwitterにあって。それを見たら、改めてこの企画をやってよかったなって思えました。先に歌詞を目にしてから初めて曲を聴く感動というのは、とても新しいなと。

──この4人になって9年目にこういう作品を作ることができたというのは、バンドとして本当に一周回ったというか、新しい一歩という感じがしますね。

三島 そうですね。大きい芯の部分は変わってないと思うんですけど、いろんなところで許容範囲が広がって「これはOK」みたいなのが増えてきてる。なのでこういうキャンペーンとか、思いついたことは積極的にやりたいし。そういうところから得た新しいものをバンドにフィードバックして、またOKなものを増やしていくのがバンドとしては健康的だと思うんです。それはレーベル含め第三者と今現在いい関わり方ができてるからここまで来れたのかなと。これが最初からできてたらまた違ったのかもしれないですけど、俺らはこのタイミングでよかったし、一周して今は気持ち的に楽しくやれてるんで。「ターニングポイントになる」というのは、そういう意味も込められてるんです。

──アーティストの中には新しいことにこだわって、過去にやってきたことを否定するわけではないですけど「一度やったことはやらない」っていう人もいますよね。シネマの場合はどうですか?

三島 僕も2年くらい前までは思ってましたけどね、「昔の作品は聴けたもんじゃないな」って。きっと(Radioheadなら)「The Bends」のファンは「Kid A」が出たときにどう思ったかっていうことになってくると思うんですよ(笑)。それはすごく考えますけど、結局全部自分の腹の中から出たものですから。それを愛さないのも変かなとは思いますけどね、今は。僕らの場合、今は自然とこうなってるのは健康的なことなのかなと思います。

■バンドというこの仕事を誇りに思ってる

──この「blueprint」というアルバムを完成させて、この先アーティストとして、そして人間として、こうなりたいという「設計図」は今自分の中にありますか?

三島 あります。あの、バンドを長くやりたいです。でもそうするにはもうちょっとお金がいるなと思います(笑)。僕はもう、それだけ。もちろん細かい要素でいったら、もっとあそこでライブをやりたいという願望はありますよ。だけど、今の生活がいい感じなので、やっぱりこれを続けていくには、もうちょっとお金が必要だと思いますね。

久野 僕はこのアルバムができて、正直バンドで今こうしたいってことが逆にないです。以前はこうしたいって思っていたのにできなくて落ち込むことがあったんですけど、今は何が来ても楽しめそうな気がしてるというか。自分がこうじゃなくちゃいけないという固定観念があまりない状態なんで、逆に気楽にやれそうというか、そういう状態ですかね。

──オープンマインドだからこそ、なんでも楽しめそうな?

久野 そうですね。だから設計図という意味では今までで一番ないかも。

──それは今が充実しているから?

久野 かもしれないですね。もちろん悩みは生きてたら尽きないですけど、自分に向かってきたものをいろいろやれる余裕があるというか。そうなってる気がします。

飯田 僕は……バンドというこの仕事を誇りに思ってるんです。去年もアルバムを出してツアーを回れたんですけど、それってバンドマンにとっては1つの大きなサイクルじゃないですか。それが心地よくなってきたというか……このままこのサイクルを何年も続けていけたら、なおかつそれでお客さんがもっと付いてきたらうれしいんですけど、こういうサイクルで生活してくことって結構楽しいし、仕事として充実してると思うんです。

──音楽業界的には決していい状況ではないと言われる昨今、ましてやロックバンドを続けるのも決して楽ではないですよね。

飯田 そうですね。後輩のバンドマンと最近飲む機会が多くて、話を聞いているとシネマのこの状況って本当に感謝しなきゃいけないっていうか、自分らはもっと自信を持ったほうがいいと考えるんです。まず、あたりまえなんですけど、感謝しようと。最近はそういう意味でも前向きです。まだやれるんだし、この先もいいことしかないなって今は思ってます。

辻 僕もこのアルバムができて、バンドを長くやれるのかなっていうのはすごく強く思うようになったし、やりたいなって改めて思いました。

──それまで長く続けるとか、そういうことはあまり考えてなかった?

辻 そうですね、なんか……ライブをやっても不安なときがすごく多かったんで。それが今はなくなったのも大きいですね。毎回得るものがあるし、楽しいし。不安よりもそっちが勝ってるのが大きいですよね。

──皆さん、あと2年で30歳なわけですもんね。

三島 (無言で笑う)いや、全然怖くないですよ。全然怖くない(笑)。そんなに変わんないですよ。

久野 でも、30までバンドやってるとは思わなかったですけど。

三島 思わなかったね。

久野 さっきの話の続きになっちゃいますけど、今までで一番「こうしたい」ってことがないっていうのは、想像してなかったところまで来ちゃったからなのかも。僕の中の人生計画では20代前半で武道館ライブをやってドーンと売れて、伝説的に解散して、その印税で生活したかったんですけど(笑)。違う感じになったから。

三島 俺もそのつもりでした(笑)。

久野 一番楽な職業がバンドマンだと思ってたからね。めっちゃ売れて、そのあとは遊んで暮らせると考えてたし。

──僕らの10代、20代の頃はまだバンドマンに対してそういう夢が抱けたと思うんですけど、いつから変わっちゃったんですかね? 今の10代の子たちはバンドにそこまで夢を見てないですもんね。

久野 一攫千金みたいなところ、ありましたよね。

三島 俺はテンプレートとしてNirvanaがあるんですよ。ものすごく売れた絶頂時に「でも俺たちはこういうサウンドにしたい」ってスティーヴ・アルビニと好き放題にアルバムを作って、そのあとに死んで伝説になるみたいな。究極のロックスターになりたいと思ってたんですけどね。そりゃ変わりますよ。時代でしかないし、それに逆らえないし。部活で野球やサッカーをやってて、例えば自分が「あ、俺はプロになれないんだ」と気付く瞬間の妙な清々しさってあるじゃないですか。多分俺が思ってたほどcinema staffがメインストリームにいる感じはしてないですけど、俺らは絶対にこれでよかったと今は思ってるし、全然まだまだ売れる気ですけど、それはそれとして今こういう状況にいる心地よさっていうか、楽しさはありますよね。「見てろよコノヤロー!」みたいなのもありますし。ここまで来れたのも、さっき飯田くんが言ってたけど本当にありがたいことだし。「まだまだやれるでしょ!」っていうのはめちゃめちゃ思ってます。