Talk03

辻友貴×福咲れん

(取材・文 / 金子厚武)

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■お互い作品を出す者同士、同じような悩みとかがあるのかなって思ったんです(辻)

―AV女優さんとの対談っていうのは今回の「TALK」の中でも異色だと思うんですけど、辻くんはなぜれんさんと話をしてみたいと思ったのでしょうか?

辻 せっかくこういう対談の企画なので、他の業種の人としゃべってみたいと思ったんです。ただ、僕しゃべるのがあんまり得意じゃないから、何か共通項がないと話せないと思ったんですよね。それで誰がいいかなって考えたときに、れんさんとは同じような音楽が好きだっていうのはわかってたから、ダメ元でオファーしてみたら、オッケーもらえたっていう。

福咲 嬉しかったです。バンドの人とツイッターとかでやり取りするのって、たぶん仕事柄あんまりよろしくないんですよね。私はガンガン行っちゃうんですけど(笑)。とはいえ、それでも相手には気を使うので、こうして辻さんの方からオファーをしてくれたのは、すごく嬉しかったです。

―今回の取材にあたって、ネットとかで色々調べさせてもらったんですけど、れんさんはホント音楽お好きですよね。かなりディープなハードコアまで(笑)。そこが辻くんの趣味とも合ったんだと思うんですけど、そもそもどうやってそういうバンドを知ったんですか?

福咲 最初はELLEGARENとか10-FEETとか、有名どころのバンドが好きだったんですけど、この仕事を始めてから、quizkidっていうバンドの方と映画で共演して、そこからATATAとかakutagawaの人たちとも知り合い、一気に交流が広がったんです。それでいつのまにか、「マニアックなバンドが好きな女優がいる」みたいな感じで面白がってもらえるようになって。

―Twitterも2人とも五味アイコンですもんね。

福咲 FLAKEのDAWAさんに間に入ってもらって、書いてもらいました(笑)。

辻 一回Twitterで絡んだことありましたよね?

福咲 私が事務所を移籍して、「改名しました」って報告をしたときに、リツイートしてくれて。

辻 「大変だなあ」みたいなことを言ってて、お互い作品を出す者同士、同じような悩みとかがあるのかなって思ったんです。事務所変わるって、契約のこととか、結構大変じゃないですか? そういうところでも共通する部分があるのかなって思って、話がしてみたいと思ったんですけど……でもどこまで書ける話かわかんないから、相当ライター泣かせだとは思うんですけど(笑)。

―辻くんとは長い付き合いだし、任せてください(笑)。れんさんがそのツイートをしたのって、どういうタイミングだったんですか?

福咲 私最近福咲れんっていう名前になったんですけど、これが4つ目の名前なんです。AVの世界だと、事務所を移籍するたびに名前が変わるんですよね。やっぱり事務所を移籍するときは大変なこともあって、一時期仕事がゼロになっちゃったときとかもあったんですけど、今は大きくてちゃんとした事務所に入れたので、やっと落ち着きました。

辻 結構縛りみたいなこともあるんですか?

福咲 「他の事務所の女優さんとはあんまり仲良くしないでね」っていうのは、この業界に入って最初に言われました。事務所を紹介しちゃったりとか、そういうことがあると責任取れないからって。

辻 そこは音楽業界とは違うところですね。

―「LOSTAGEとあんまり仲良くしないでね」って言われても困るもんね(笑)。

辻 そうですね(笑)。

■音楽業界の人って、すごく輪を大事にする人が多いじゃないですか? そこがすごく楽しいんです(福咲)

辻 仕事としては、どんなことがあるんですか?

福咲 普通の撮影以外だと、Vシネマとか、地上波のドラマやバラエティ、あとはニコ生とか雑誌とかですね。

辻 そこは音楽業界と同じ感じなんですかね? リリースするときにキャンペーンがいっぱいあるみたいな。

福咲 ちゃんとしたキャンペーンをするのは、メーカー専属の女優さんだけなんです。私は専属じゃなくて、いろんなメーカーから出してるんですけど、専属だとそのメーカーから月に一本って決まってて、その作品のキャンペーンをやるんですね。私もデビューして一年目は専属だったので、月一本リリースして、あとは毎週秋葉原とかで発売イベントをやったり、雑誌で宣伝してもらったりでした。

―事務所があって、メーカーがあってっていう意味では、音楽業界とも一緒ですね。シネマは今事務所は残響で、メーカーはPONY CANYONだけど、言ってみれば、れんさんは残響にいながら、PONY CANYON、UNIVERSAL、UK PROJECT、FLAKE、いろんなところから出してるみたいな感じかな(笑)。

福咲 そうです、そうです(笑)。

―辻くんは自分でレーベルもやったり、残響ショップの店長をやったり、かなりいろんな活動をしてますよね。

辻 ずっとそうゆうことはやりたいなと思っていて、十何年バンドやって、何枚かCD出して、自分のペースも掴めてきてやっとやれるようになってきたって感じですね。それを自由にやらせてもらえてるのはすごいありがたいです。もともとメジャーではやってみたいと思っていたんですけど、昔はこういう考えを理解してくれる人がいないんじゃないかと思ってて、そこが不安だったんですよ。インディーズの音楽めっちゃ詳しい人とか、あんまりいないんじゃないかなって。でも、今の担当とは音楽の話めっちゃするし、CDの貸し借りもめっちゃしてるんですよね。「こういうバンドみたいな音でやりたい」っていう話がちゃんと通じるんで、すごいやりやすいんです。マニアックなバンド名を出しても、「ああ、その感じね」って会話ができるのって、すごいありがたい。

―やっぱり、自由に活動するにあたっては、その事務所やメーカーの人との関係性がすごく重要ですよね。れんさんはそのあたりいかがですか?

福咲 いい子ちゃんにしてるだけじゃなくて、ちゃんと自分の意見を言うっていうのは大事にしてます。マネージャーに対してもそうだし、メーカーのスタッフさんに対してもそうだし。わがままにならない程度に(笑)。

―それもやっぱりだんだん言えるようになった感じ?

福咲 そうですね。最初は「わかりました」としか言ってなかったと思います。イエスマンだったっていうか、どこまで言っていいかわからなかったので。正直、最初はめっちゃ怖い業界だと思ってたんですけど、全然そんなことないんですよね。私もう4年やってるんで、撮影で何回も会ってるスタッフさんとかいて、そういう人は私のこともわかってくれてるから、すごく仕事しやすいし、女優さんでも何回か会ってる子だと、共演もので一緒にカメラの前にいても、グルーヴが出るっていうか(笑)。だから、今が一番楽しいです。

―そこもホント音楽と一緒ですね。何回も出てるライブハウスのスタッフさんとは仕事がしやすくなるし、何回も一緒にやってる対バンとはグルーヴが出るし。

辻 でも、女優さんとは現場で仲良くなっても、あんまりお互い踏み込めないわけですよね?

福咲 そうなんです。現場で会ったら仲良くしゃべるし、一緒に写メ撮ったりする女優さんはいっぱいいるんですけど、プライベートで連絡先を知ってる子っていうのはほとんどいないですね。

辻 そういうのは嫌じゃないんですか?

福咲 あー、でも私あんまり同業の子とはプライベートで仲良くなりたくないんですよね。事務所同士で何かあると嫌なので。だから、音楽業界のお友達が多くなったんだと思います。音楽業界の人って、いろんな人紹介してくれるんですよね。飲み会とかあると、「今日誰々呼んだから」みたいに、すごく輪を大事にする人が多いじゃないですか? そこがすごく楽しいんです。

辻 確かにそうですよね。飲みに行って、いろんな人紹介してもらって、それでつながって……シネマは特に、名古屋時代から先輩によくしてもらってて、そのおかげでここまでこれたと思うし。

福咲 大事ですよね。つながりって。

■ファンの人から一番声をかけられる場所はライブハウスなんです(福咲)

―辻くん、AVの業界のことでどんなことが気になりますか?

辻 そうですね……今ってTwitterとかあって、自由に発言できるじゃないですか? だから、「音楽業界はこういうもの」っていうのが、一般の人にもある程度ばれてると思うんですね。これだけ売れたとしても、これぐらいのお金にしかならないとか。

―メジャーに行ったからって、すぐにお金持ちになれるわけじゃない。ある種の幻想みたいなのはなくなったでしょうね。

辻 それと同じようなことがAVの世界でも起きてるのかなって。

福咲 Twitterがあるから、ファンの人との距離はすごい近くなったじゃないですか? そういう面は変わったと思うんですけど、現実的な話をしちゃうと、確実に仕事の量は減ってるし、ギャラも下がってきてると思います。やっぱり、ネットに流されちゃうので。それはきっと音楽も一緒だと思うんですよね。発売して次の日にはネットで見れちゃうっていう。だから、やりにくくなってる部分はあると思うんですけど、なんだかんだ楽しくはできてるんですよね。さっきの話に戻りますけど、最初はすごい不安を持って業界に入ったんです。でも、みんなすごい優しくしてくれて、ホントお姫様扱いなんですよ。「大丈夫? 寒くない?」とか「喉乾いてない?」とか、ホントそういう世界で、撮る内容に関しては嫌だなって思うこともあるんですけど、そういうときでも現場の雰囲気は悪くないし、楽しくできてます。

―パッケージの売り上げが下がってるっていうのは、共通する問題ですよね。だからこそ、ただCDを出して、ライブをするっていうだけじゃなくて、それこそTwitterだったりとかも含めて、その人がどんな人で、どういう考え方をしてるのかっていうのを見せるのも、ひとつの大事な要素になってたりする。その意味で言うと、れんさんは「音楽が好き」っていうキャラクターが結果的に確立されて、プラスになってる部分もあるのかなって。

福咲 そうですね。それが売りってわけではないですけど(笑)、「れんちゃんと言えば音楽」って思ってくれてる人が多いので、武器にはなってるのかなって。道歩いてるときとか、たまにファンの人に声をかけてもらえるんですけど、一番声をかけられる場所はライブハウスなんです。あと私のDVDのイベントとかだと、「音楽の話をしてるのを見てれんちゃんを知って、それで来ました」っていう人もいるので、それは嬉しいです。とはいえ、いかに作品を一枚でも多く売るかに必死ですよ(笑)。

―まあ、そこはそうですよね。

福咲 それこそ握手券じゃないですけど、チェキを撮ってDVDにつけたりとか、いろいろやってます。ただDVDを出しただけだと元が取れないこともあるので、そういうときは撮影で着た衣装をオークションに出したりすることもありますね。

■メジャーでやりたいことをやりながら、ちゃんと売れたい(辻)

―辻くんは今の音楽業界をどんな風に見てますか?

辻 今ってメジャーもインディーも大きな差ってなくて、「どれだけ面白いことをするか」みたいな感じにちょっとなってますよね。例えば、THE NOVEMBERSとかは独立して成功しているバンドだと思うんです。やりたいことをやりながら、その上で面白いことをやってる。

―音楽のクオリティありきだもんね。

辻 そうですよね。だから、僕も独立のこととか考えることはあるんですよ。ただ、今のシネマがやることはそれじゃないっていうか、今はメジャーでちゃんと理解してくれるスタッフがいるから、そこでやれること、やりたいことを限界までやってみたい。今それがやれてるバンドってあんまりいないと思うから、そこは頑張りたいなって。

―途中の話にもつながるけど、メジャーもインディーも関係ない中で、大事なのはやっぱり人との関係性かなと。れんさんは今の事務所とはいい関係性を築けてるわけですよね?

福咲 そうですね。今の事務所は業界の中でも1、2番くらいの大きな事務所なので、すごくシステムがしっかりしてて、マネージャーの数も多くて、女優の数も多いんですけど、その分仕事も入ってくるんです。

辻 マネージャーさんとはどれくらい一緒にいるんですか?

福咲 普通の撮影のときは、朝台本をもらうんですけど、それを現場マネと一緒にチェックして、「大丈夫だよね」ってなったら、「じゃあ、バイバイ」って。

辻 え?

福咲 いなくなります。

―撮影中はいないんですか?

福咲 いないですよ。

辻 えー!

福咲 いてほしくないです、逆に(笑)。もちろん、業界に入りたての何にもわかんない頃はいてくれましたけど、今は「大丈夫だよね。頑張ってね」って。で、時間が合えば迎えに来てくれて、家まで送ってくれることもあれば、一人で帰ることもあります。

辻 じゃあ、マネージャーと密に連絡を取り合うような関係にはならないわけですか?

福咲 基本的に、仕事の話しかしないです。現場に行くときの車の中とかは、プライベートの話とかもするので、仲はいいんですけどね。

―PONY CANYONさんとは密に連絡を取り合ってるんですか?

辻 めちゃくちゃ話してますね。めっちゃ信頼できるんで、何かあったらすぐ連絡してます。

福咲 友達みたいな感覚ですか?

辻 そうですね。僕はそういうノリじゃないと、仕事だって思った瞬間に、やる気なくなっちゃうタイプなんですよ。今の担当になったのは一年前くらいで、その前から音楽の話はよくしてたんですけど、めちゃめちゃ仕事できるし、信頼してます。そこはすごく大きいです。

―れんさんも今の事務所で早くそういう関係性が作れるといいですね。

福咲 そうですね。まあ、私も慣れてくると人懐っこいタイプなんで、時間が解決してくれるかなって思ってます(笑)。

■海外のフェスに呼んでもらって、その流れで貧乏ツアーしたいです(笑)(辻)

―では最後に、シネマの新作のタイトルにかけて、れんさんの「blueprint」、将来の青写真を話してもらえますか?

福咲 私まだ海外でお仕事したことがないんですよ。アジアにはずっと行きたいと思ってて、それはまだあきらめてないです。

―なぜアジアなんですか?

福咲 私TwitterとかInstagramのフォロワーさんの半分くらいが外国の方なんです。頑張って日本語訳したんだろうなって言葉で、「応援してます」ってメッセージを送ってくれる方が結構多くて、「台湾に来てください」とか「韓国に来てください」ってすごい言ってくれるので、そういう人たちに会ってみたいなっていうのがすごくあります。ネット社会だから、海外の人も見れるわけじゃないですか? ファンの方の熱量はむしろ海外の方が強いぐらいなので、イベントとかやってみたいです。

―そこに向かって、何か心がけてることとかありますか?

福咲 小っちゃいことですけど、SNSに来たコメントはできるだけ返すとか、そういうことはしてます。「ありがとう」って一言返すだけでも、すごい喜んでくれて、テンション高い返事をくれるんですよね。それは私としても嬉しいし、大事にしなきゃなって思います。

―シネマはアジアでライブしてますよね?

辻 まだ台湾だけですけどね。僕も個人的に海外はめっちゃやりたい。

福咲 台湾のときはどうだったんですか?

辻 よかったです。アニメの曲を一回やってるから、それはでかいと思います。Twitterとかでもメッセージが来るし、YouTubeでコメントくれたり。

―YouTubeの「シャドウ」のコメント欄を見ても、海外の人結構多いですよね。

福咲 海外の人はマメですよね。Instagramのコメントも圧倒的に海外の人が多いです。

辻 躊躇しない感じがありますよね。

―アメリカとかヨーロッパでライブしたことはまだない?

辻 ないです。一個フェスみたいなのに呼んでもらって、その流れで貧乏ツアーしたいです(笑)。「SXSW」とかはやっぱり憧れますね。LITEとかすごかったらしいし、向こうのレーベルがあるとまた違うんでしょうね。

―LITEはマイク・ワットとつながったりしたのが大きかったと思うし、やっぱり大事なのは人とのつながりですよね。今日2人と話をしてみて、共通点はそこだと思いました。2人とも人が好きで、つながりを大事にしてるんだろうなって。

辻 そうかもしれないですね。うちらも海外のバンドのサポートとかもたまにやらせてもらってるし、個人的にMEMORY MAPを呼んだりもしてるので、そういうつながりを使って、いつか海外でドサ回りしたいですね(笑)。