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三島想平 × LiSA

(取材・文 / 西廣智一)

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■シネマはいつも先を行ってたしヒーローだった(LiSA)

──まずcinema staffとLiSAさんという組み合わせに驚く音楽ファンが多いと思うんですが。

三島 そうでしょうね(笑)。

──cinema staffのアルバム「blueprint」特設サイトにLiSAさんのコメントが掲載されてビックリした人も多いと思うので、まずはお2人の関係について聞かせてもらえたらと思います。

三島 これはですね、高校の頃にお互い岐阜でバンドをやってたんです。

LiSA そうだね(笑)。

三島 岐阜BRAVOというライブハウスがありまして、そこに僕らは、ドラムの久野くん以外の3人でやってたcinema staffの前身バンドREALとして出演してました。

LiSA そうだ! REALって名前だった!(笑)

三島 (笑)。当時の岐阜の音楽シーンってそこそこ盛り上がっていて、毎週ブッキングライブがあったり地方のバンドがツアーで来たりしてたんです。で、僕らもそこに出させてもらって、LiSAちゃんもCHUCKYというバンドで出ていたと。同年代で、高校生の頃に初めて対バンしたのかな。

LiSA 私は彼らが活動している場所とは全然違う田舎のほうに住んでいたので、あんまりそちらに行く機会がなくて。自分がバンドを始めようと思ってライブハウスに行くようになると、「今、すごくカッコいいバンドがいるんだよ。REALがヤバイよ」って話をよく耳にしたんです。私たちの年代でバンドをやってる人たちはみんな彼らの名前を挙げていて。

三島 ホントに?

LiSA そうだよ! 私が行ってた高校にも彼らと同じ中学校の子が結構いて。「バンドやってるんだよね」って言うと、「じゃあREALって知ってる?」って聞かれるくらい(笑)。ライブハウスに行っても「お前らと同い年くらいだったら、REALが一番カッコいいよ」と言われるから、「マジどんなもんだ?」って観に行ったんです。そうしたら本当にカッコよくて、同年代でこんなにもがんばってる人たちがいるんだと思ったのをよく覚えてます。

──三島くんはLiSAさんのバンドのこと、覚えてますか?

三島 もちろん覚えてます。女の子がボーカルのメロディックパンクで、Blink-182やNew Found Gloryみたいな曲をアヴリル・ラヴィーンが歌ってるようなイメージ。「これが同年代かあ」と驚いたし思ったし、見た目でもスタッズとか付いたファッションだったし、かなりビビってたんですよ。

LiSA あははは!(笑) パンクだったからね。

三島 でも話してみたら全然怖くなくて(笑)。お互いに「俺らはバンドでがんばりたいんだよ」「がんばろうぜ!」みたいな空気になったのは覚えてます。それから何回か対バンしたし、お互いのライブを観に行っただけの日もあるし。同年代で一番せめぎ合えるというか、ライバルみたいな気持ちはすごくありました。

LiSA 私がシネマの特設サイトに出したコメントにも書いてるんですけど、彼らはいつも私たちの先を行ってたんです。いつでも岐阜のヒーローでしたし、私たちはずっと追いつけなかった。で、そこから事務所も残響レコードに決まり、活動拠点を名古屋にいち早く移して。みんな頭もいいし、カッコいい音楽をやってるし、しかもそれを涼しい顔をしてスラッとやるのがムカつくみたいな(笑)。

三島 あはははは!(笑)

LiSA 私たちは本当に泥臭い中でどれだけ熱くやれるか、汗をかいて一生懸命やってるのに、彼らはサラッと涼しい顔をしてやるんです(笑)。

三島 いやいやいや(笑)。

LiSA 地元の同年代のバンドにとっていつも話題の中心でしたし、彼らが拠点を名古屋に移したあとも「自分たちもそれに続かきゃ。彼らに追いつかなきゃ」って気持ちでやってましたね。だってシネマが残響レコードと契約したってときは、岐阜では大ニュースでしたもん。しかも彼らはそういう話、自分たちからは絶対に言わないんですよ。BRAVOのオーナーの高橋さんなんてそれがうれしくて、私たちに「俺のcinema staffが残響に決まったらしいよ」って自慢げに言ってくるんです(笑)。自分の周りで、最初に道を開いたのがシネマでしたし、そういう意味ではヒーローなんだよ。

三島 ありがとうございます。お恥ずかしい(笑)。でも俺は俺で思ってたことがもちろんありますから、CHUCKYに対しては。

LiSA そうなの? でも三島っちは制服を着てアコギを持って、ゆずも歌ってましたからね(笑)。

三島 ……歌ってた!(笑)

LiSA そういうときもちゃんとお客さんがいましたし、いつも周りにはカワイイ女の子がいっぱいいましたし(笑)。

三島 あはははは!(笑) そんなことないわ、それは盛っとるよ!(笑)

LiSA 私たちの周りには、ちょっとやさぐれてる男の子たちがいっぱいいましたけど。

三島 俺はそれがカッコいいなと思ってたよ。正直な話、CHUCKYとかビビっとったから。でも何回か喧嘩もしたしね、音楽感の違いみたいなところで。

LiSA そうだね(笑)。

三島 俺は俺で、CHUCKYのやり方にちょっとイライラしていたところがあったし、それと同時にこんなにカッコいい人たちがもっと表舞台に出ていける環境があったらいいのになって、いつも考えてたの。

LiSA 私たちはバカだったんです(笑)。本当にやり方も知らず、自分たちで道を開くってことができなかったんですけど、彼らはそれを自分たちで考えて自分たちの肌に合う場所を見つけて、いち早く出て行った。だからヒーローなんだと思うんだよね。

■LiSAちゃんに対する気持ちがあるタイミングで嫉妬に変わった(三島)

──LiSAさんはCHUCKY解散後に上京してから間もなくして、アニメ『Angel Beats!』でブレイクを果たします。

三島 これがもう5年前かあ。

LiSA でもさ、ちょうど私が東京に出る頃に、シネマは残響が決まったんだよね。だから私的には彼らのほうが先に行ってるイメージで。

──そういうLiSAさんの活躍を、三島くんは知ってたわけですよね。

三島 はい。あれはすごいというより、まずビックリでしたね。「なんで!?」っていうのが先でした。当時はLiSAちゃんとアニメっていうのが、まったく結びつかなくて。「私はバンドがやりたいんだ!」と言って東京に出て行ったイメージがあったからね。とにかくビックリしました。

──その後、LiSAさんもソロとしてどんどん作品をリリースして、活動の規模もどんどん大きくなっていきます。

三島 これはなんかもうすごいことが起きてるって感じになってるぞと思ったら、もう武道館っていう印象でしたね。友人が武道館でワンマンライブをやるっていう経験がなかったので。今年1月の武道館も観させてもらいましたけど、本当にやったのかなって(笑)。脳の処理が追いついてない感じがいまだにありますから。あの、正直なところ、LiSAちゃんに対する気持ちがあるタイミングで嫉妬に変わったところはあります。さっきも俺たちのことをヒーローって言ってくれたけど、最初は俺たちが優位に立ってると思ってたからね。それがいつしか、自分とLiSAちゃんを比べる瞬間がすごく多くなってきて。だから俺はこれまで、あんまりいろんなことを聞かないようにきたの。LiSAちゃんがどういう生活をしていて、どういう曲や歌詞を作ってるのか、プロとしてどういうことをやってるのかって。あんまり比べると自分のやり方が間違ってるんじゃないかって気になるんじゃないかと思ってたから、あんまりしゃべらなかったですね。

LiSA そうなんだよね。たぶん私たち、最初っからそうなんですけども、やり方が本当に違うんですよ。もっと言えば、音楽が好きで、バンドがやりたくて、それで暮らしていくんだ!ってこと以外、私たちの共通点ってなくて。だからカッコいいの概念も違うし、やりたいことの正解も全然違ってたし。でも私はシネマが先に進んでたのがすごく悔しかったし、自分が否定されてる感じになった。だから私がやってることを見て、三島っちたちが自分たちがやってることが間違ってるんじゃないかと自分を疑いたくなっちゃうのも私はわかるよ。もちろん今は全然そんなことないんだけど。

三島 うん、今はね。

LiSA あの頃は自分も正解を探しながら、すごく迷ってもがいていた。彼らのことがずっと気になっていたし、「くっそー、シネマには負けないぞ!」と思ってたし。

三島 それは俺も同じですよ。

──そう考えると、今ここで2人が交わってるのは本当に面白いですよね。

三島 すごい面白いですよ! ありがたいです。それもこれも、お互いにここまで音楽を続けてたからであって。だって高校生のときに出会ってから、もう10数年経ってますからね。

LiSA コメントにも書いたことですけど、あの頃のままのシネマがちゃんと残ってる状態で、ここまでずっと続けてきてくれていることが、私にとってすごい救いで。ファンの方もそうだと思うんですけど、自分の好きな音楽がなくなってしまう、見られなくなってしまう、触れられなくなってしまうことほど悲しいことってないと思うんですよ。もちろん彼らには大変な時期もあったでしょうし、私が見ていたヒーローのままでトントン拍子でいったわけでないでしょうし。だからこそ、このアルバムができたんでしょうね。そうやって彼ら自身がもがき続けて、自分たちに今できる精一杯のことをずっとやり続けてきてくれてるからこそ、私もがんばろうって思ってますし。だから私もシンガーとして音楽を続けなくちゃって思ってます。

三島 ありがとう! 本当に同じことだと思うんですけどね。こないだ武道館でライブを観させていただきましたけど、もちろん歌は昔からうまいし、今でもプロとしてトップレベルだし、ショーとしても今のLiSAちゃんが一番いい形で表現されてたと思う。でも根本の部分はやっぱり変わってないと思いましたよ。高校のときに見たLiSAちゃんの究極系、進化系というか。東京に1人で出てきて、自分で道を切り開いて、彼女のことをわかってくれてるスタッフやメンバーと一緒にここまで来たというのを、バーンと見せつけられた。そんなライブだと思いましたし、本当に最高でしたよ(笑)。

LiSA うふふふふふ(笑)。

三島 正直、あんなに泣くことないってぐらい泣いたよ。そのときはライブを観ながら、そんなことを考えてました。

LiSA ちゃんとバンドやってたでしょ、私。

三島 やってた! そうだ、バンドなんですよ! それだね、それそれ。バンドやってた!

LiSA LiSAっていうバンドなんだよ。

三島 そうだね……うん、カッコよかった。

LiSA ここまで、ちまちまとバンドを作ってたんだよ。

三島 ちまちまかどうかはわかんないけど(笑)、本当に思うことがいろいろあったライブでしたね。こうやって結実してる感じは俺も勇気をもらえますし、実際曲を作るエネルギーにもなりますし。

■私から見たシネマはあの頃から何も変わってない(LiSA)

三島 実は、アルバムの「シャドウ」っていう曲の歌詞は、あの武道館を観た次の日に書いたんです。

LiSA えっ、次の日に書いたの? すごい!

三島 この曲の歌詞が3週間書けなかったのに、ライブを観て一瞬で書けたという(笑)。

LiSA イエーイ!(三島とハイタッチ) 新しいアルバムを聴かせてもらって一番思ったことは、彼らはまだ走り続けている途中で、彼らの歌にはいつも「悔しい、悔しい、悔しい!」っていう気持ちが詰まっていて、でもその少し先に必ず希望があるってことなんですよ。今いる場所に満足はしてなくて、未来にすごくワクワクしている。こうであったらいいなっていう希望を捨ててないからこそ、聴いてすごく元気になるし、だからシネマについて行きたいと思う。私から見たシネマはあの頃から何も変わってないから安心したし。とはいえずっと進化し続けながら希望を追い求めている彼らの姿が、ここにあるんだなとすごく思いました。

三島 ありがとうございます。これ以上ない素晴らしい意見でございます。俺らも本当にそのつもりでやってるし、本当に何にも諦めてないし。今は音楽をやってて楽しくて仕方ないし、30代になることをまったく恐れてない。まだまだあれをやりたい、これをやりたいってことがどんどん出てくるしね。LiSAちゃんもそうだと思うんだけど、それはもう幸せなことですよ。悔しいってことは、例えば対象がLiSAちゃんだったり他のバンドだったりするかもしれないけど、たぶん一生、俺はずっと「これやられた、あれやられた」って思うから。でもそれがいろんな原動力にもなるし、そういうエネルギーを発するバンドでずっとありたいと思うんだよね。

LiSA そうだね、そこはずっと変わんないと思う。

三島 変われないかな。

LiSA この先シネマが武道館やさいたまスーパーアリーナ、ドームに行ったとしても、ずっと変わらないと思う。

三島 たぶんもう、そこを変える気もないし、変わる雰囲気もないし、そうでありたいし。

■大人の応援歌を書きたくて「drama」が生まれた(三島)

──LiSAさんはcinema staffのニューアルバムで好きな曲として「drama」を挙げてますよね。

LiSA はい。「drama」は私がLiSAとして歌ってることに似てると思いました。すごく前を向いてる感じが。

三島 うん、それはあるかも。これは東京は肯定する曲でもあって、保守的でありたくないよねっていうことを歌っていて。「最終回のような毎日を生きていきたい」ということを言いたいがためにこの曲を書いたところはある。自分でそのチャンスを作っていかないとっていうことだよね。

LiSA LiSAとして私がずっと歌っていることは正にそういうことで、私は人が聴いたときに「明日はがんばろう」って希望になるような曲を歌っていきたいと思っているのね。だから私的には初めて三島っちと同じ気持ちになったというか(笑)。

三島 あはははは(笑)。今は大人の応援歌を書きたいと思っていて、「drama」はまさにそういう歌詞なんだよ。やっぱり大人になって、言いたいことがちょっとずつ変わってきてるし。でも俺はLiSAちゃんみたいに一貫してそういうのがあったわけじゃないから、27歳になってやっとこういう境地に達したところはあるかな。

LiSA すごい走り出す感があるよね、この曲は。

三島 泣きながら走ってる感じっていうか。俺らはそれを、kidd(岐阜を拠点に活動するバンド)から学んだ世代じゃない? それを今やりたいというところがあって。あの感じは、大人が泣きながら走って、全力で拳を振り上げているからカッコいいんであって、今なら自分たちもやれるかなと思ったんだよね。

LiSA だからシネマの音楽ってすごく等身大なんだと思うんです。見栄を張ってない感じっていうか、cinema staffとはこうあるべきというのがないというか。ちゃんとそのときそのときの気持ちで音楽をやってるんだなっていうのを、すごく感じます。

三島 そうだね。でも、例えば俺が「今回はこれについて、こういうアルバムを作りたいんです」って言ったら、メンバーは「えーっ?」って言うんだよ。

LiSA あはははは(笑)。そうなの?

三島 みんな、やりたいことがいろいろ出てきたからね。今回の「blueprint」も、コンセプトっていうか主になってる「シャドウ」や「青写真」っていう曲は俺が主体で書いたけど、あとは久野くんたちが「こういうのあったらいいんじゃない?」とか「こういうコンセプトだったら、こういうのじゃない?」とか言ってくれるから、4人で作ってる感じがすごいあるのよ。しかもレーベルや事務所も俺らの曲に対して「歌詞を変えろ」「曲を変えろ」と一切言わないから、全部自分らでセルフジャッジしなくちゃいけない。だからありがたいなと思う瞬間と不安になる瞬間があるんだよね。LiSAちゃんは歌詞は全部セルフジャッジしてる?

LiSA いや、最初に書いたものを提出して、赤ペン先生みたいに「これはわかりづらい、書き直し」とか入るよ。

三島 ああ、そういうのがあるんだ。俺は誰も添削してくれないから、不安になるんだよね。

LiSA それはメンバーも言わないの?

三島 言うときもあるよ。例えば「進撃の巨人」のとき(「great escape」)はさすがに「これはこうじゃないか」とかあった。あとは「三島のこと信用してるからいいよ」っていう。

■今これだけ好きだって言ってくれる人がいる以上は続けるべき(LiSA)

三島 LiSAちゃんはいくつまで音楽を続けたい?

LiSA できるならずっとやりたい。さっきも言ったけど、やっぱり自分の好きな音楽がなくなってしまうっていうことが悲しいし、今これだけ好きだって言ってくれる人がいる以上、私は続けるべきだと思うし、作り続けるべきだと思うし。自分たちが生きている以上できる限りはやらなくちゃいけない使命を与えられてると思うから、やらなくちゃいけないと思う。私は去年の武道館ライブ、3曲目で声が出なくなっちゃって、そのときはマジでやめたいと思ったの。マイクを置いてすぐに武道館を去るべきだと思ったもん。でも目の前に最後まで応援してくれる人が1人でもいるんだったらこの場は続けるべきだと考えて、それでできた部分があったし、そこで乗り越えたからこそ今年の武道館があった。すべてのことに意味があって、やり続けていればずっと信じてついてきてくれる人がいて、それがちゃんと形になっていくんですよね。たとえはじめは「お前嘘つきじゃん、そんなの口だけじゃん」って言われてても、ずっと続けていればそれが本当になるし、「こいつの言ってること、なんか嘘っぽいけど、なんか説得力があるんだよ」って考えが変わるかもしれない。そういう人になるためには、やっぱり続けるしかないんだと思います。

三島 俺も本当に同じで。俺がcinema staffで最初に思い描いていたイメージにまだ全然達していないし、他のメンバーも誰一人として達してると思ってないはず。それはセールスもそうだし活動の規模もそうだし。だけど去年AXやZeppでワンマンライブをやったときに、「この人、絶対に5年前から観てるやろうな」っていうお客さんがいるのがしっかりわかった。恥ずかしい話、自分たちがやってることをちゃんと追ってくれてる人の存在を俺がちゃんと意識したのは、25歳を超えてからなんだよね。だからこそもっとやらなきゃって今は思っているし。俺はいくつまでやりたいと言っとこうかなあ……LiSAちゃんはシンディ・ローパーでしょ、目指すところは?

LiSA そうだね。

三島 じゃあ俺は……内田裕也って言っておこう(笑)。俺そうですね、60代までやります。

LiSA でも三島っちはそもそも、最初は自分がただ音楽をやりたいと言ってメンバーを集めただけかもしれないけど、三島っちを信頼しているメンバーがいる限りはやめちゃいけないと思うし、やめられないと思う。

三島 うん、全然やめる気はない。あの人たちがいないとダメだしね。それはもう心の底から思ってるし、それが一番いいんですよ、俺は。